本番の朝、あらためてランナーであることを感謝。
高まるワクワク感、感謝の思い。
7月20日、少し落ち着かない気持ちで朝を迎えました。
散歩をしながら、都内のジムで、毎週練習してきた日々を思い出しました。
いきなり走ると「筋肉が驚く」とトレーナーに言われ、ストレッチや体幹を鍛えるトレーニングから始めました。デスクワークの多い人は臀部の筋肉が退化してしまうそうで、そうした部分の強化を行いました。
聖火ランナーは1人200メートル走ることになっていました。最初に200メートルと聞いた時には、とても長く感じました。
ランニングマシーンを使って少しずつ走り始めました。
慣れてきた後、トーチの重さを感じるために、バットを持って走りました。トーチは長さ71センチ、重さ1.2キロのアルミ製で、日本人に最もなじみ深い花である桜をモチーフとしています。 素材の一部には、東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ建築廃材を再利用していました。
普通に走るとの1.2キロを持って走るのでは、体への負荷が違うので、慣れるためにバットを持って走りました。
最終練習日にはスタッフのみなさんがバットに応援メッセージを寄せ書きしてくださり、私は「この人たちの思いも受けて走ろう」と感じました。
感謝の気持ちも大きくなってきました。
全国で53万6000人の応募があり、約1万人が聖火ランナーに選ばれました。そして、ありがたいことに、自分はそのうちの1人なのです。
コロナ禍であり、ランナーには遵守しなくてはならない事がありました。
本番の2週間前から会食をしないこと、密集する場所への外出を避けることなどです。
体調管理シートを2週間つけました。毎日体温を計り、新型コロナ対策に万全を期し、PCR検査を受け、陰性証明を提出しました。
こうしたいくつかのハードルをクリアし、晴れて当日を迎えることができました。
ランナーの気持ちは盛り上がる
東京都内では、TO K Y O2020を実施するための交通規制が行われていました。車を使うと到着時刻が把握できないというリスクがあったので、集合場所である台東区民会館まで電車で向かいました。
台東区民会館では、東京都聖火リレー実行委員会の人たち、協賛企業の人たち(日本生命、コカ・コーラ、トヨタ、NTTの社員の皆様)が、新型コロナの感染予防に最大限の注意を払いながら準備をしていました。
思えば大変な準備があったはずです。区間を決め、ランナーを配置し、サポートや警備を行います。
そんな彼らが私たちを応援してくれました。
聖火ランナーの控え室で、星野リゾート代表の星野佳路さんとお会いしたのですが、星野さんは、「こんなにすばらしい歓迎を受けたことはない」とおっしゃっていました。「おもてなしのプロ」がそう語るほど、組織委員会、聖火リレー公式パートナーの方々の盛り上げ方は見事でした。
有名人ランナーとの交流もありました。
落語家の林家三平さんはさすがの話術で、聖火ランナーたちの緊張をほぐしてくださいました。
世界的デザイナーのコシノジュンコさんとは、ランニングの準備の話で盛り上がりました。
ランナーは本番用のユニフォームに着替え、小型バス4台に分乗しました。
その時も協賛企業の人たちが「いってらっしゃい」「いってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれ、ランナーの気持ちは盛り上がっていきます。拍手で送り出され、自分たちが聖火ランナーであるという自覚を改めて感じることができました。
そして、いよいよ中央区立浜町公園に到着しました。さあ、はじまります。