バトンタッチを考える

次の世代に何を渡したらいいのか。

トレーニングを終えて

財産遺して銅メダル 

 次世代へのバトンとして何を渡したらいいか、何を遺せるかとよく考えます。 

 私は「財産遺して銅メダル」、「思い出遺して銀メダル」、「生き方遺して金メダル」と思っています。 

 相(すがた)を続けていくのが相続だと言われます。そのためには基盤がないと続けるのが難しいことがよくあります。 

 基盤である財産を遺すことは素晴らしいことです。 

 預貯金、土地、建物、有価証券、金。 

 財産を遺すということは、たしかに価値があります。 

 多くの財産は遺した人の志を守ってくれます。継いでくれる人にとっては有益かもしれません。 

 しかし、財産を使う人によっては、混乱の素かもしれません。向上心をかえって妨害するかもしれません。 

 私の場合で遺せる財産について考えてみると、事業があります。子どもたちには、これを上手に活用してもらえればと思います。 

思い出遺して銀メダル 

 思い出は銀メダルです。 

 心温まる両親とのあの思い出。 

 あの事件、あの苦労を共に乗り越えられた。 

 喜んでくれた笑顔があった。 

 長い時間をかけてあの仕事を達成できた。 

 厳しいしつけがありがたかった。 

 いっしょにあんなことをやった。 

 こんなことをやった。 

 一緒に喜んだ、泣いた、寄り添ってもらった。 

 ひとりの人生には語り尽くせない「思い出」があります。 

 私自身、これまで多くの出会いがあり思い出をもらいました。私が亡くなった後、身近な人が少しでも思い出してくれたなら、こんなに嬉しいことはないでしょう。 

生き方遺して金メダル 

ランニングマシーンでのトレーニング

 さらに価値のあるものは生き様です。こんな人がいて、こんなことを考え、こんなことをしていたのだということです。思い出は当事者にしか残りませんが、生き様は後世まで残ります。銅像はいつか朽ちるけど生き様は残ります。 

 昔々こんな人がいました。 

 こんなことを経験し、こんなことを語りました。その生き方が、どこかで私たちに影響を与えました。 

 これが生き方というものです。生き方は見えないし、残っていないかのようですが、実は、多くの人々に本当に遺せるものは生き方です。 

 相続をお手伝いしていると「亡くなった方の生き方」をお聞きする機会を多く頂きます。語り継がれる生き方。それは時空を超えて遺るようです。 

 ウォルト・ディズニーは1952年、51歳でディズニーランド構想を発表しました。生命保険を担保に借金をして、はじめたそうです。 

 そして1955年、54歳の時にオープンできました。 

 1966年に65歳で亡くなりますが、1971年にオーランドのディズニー・ワールドが完成し、1983年に東京ディズニーランドが開園しました。 

 そしていまでも彼の精神はしっかりと引き継がれています。 

 生き方は相続されるのです。これこそが金メダルです。 

 生き方の定義はなかなかむずかしいのですが、何らかの出来事があったときに、「こんなことをやっていた」「こんな失敗をした」「できないうちに死んでしまった」というのも生き方です。 

 多くの人は自分の使命を達成できないうちに死んでいきます。 

 志半ばで死んでいくのが普通です。 

 だから、生き方を遺すとは、「こんなことを考えていた」というのを遺すことかもしれません。 

 私が聖火ランナーに応募し、それを記録として残すことも、生き方を遺すことの1つです。